「猫はひとりで生きる動物。野生の猫族も単独で生活しているのだから家猫(イエネコ)だって1頭の方がいいに決まっている」「他を寄せ付けない孤高なところがいいんだよね」」「犬は群れをつくるから複数で飼った方が幸せで、猫は群れを嫌うから単独が幸せ」これは猫を一頭飼いしている人からよく聞く言葉です。でも本当でしょうか?
今回はそんな猫の多頭飼いについて、メリットやデメリット、注意点についてご紹介します。
猫族だって集団で暮らしています
多くの猫族は基本的に単独で生活しています。イエネコの先祖である山猫も繁殖期以外はひとりで暮らします。
これには棲んでいる場所の問題もあるようです。猫族のほとんどは森の中で暮らしています。周囲の木や草に隠れ、そーっと獲物に近づいて捕まえる方法で狩りをします。この時、集団で行動していたらすぐに相手に気づかれてしまうでしょう。
しかし、草原を住処にしているライオンは群れをつくって暮らしています。隠れる場所の少ない草原での狩りは単独でおこなうよりも、追い立てるもの、行く手を塞ぐもの、襲いかかかるものと役割を分担した方がいいのです。子どもを狙う敵に見つかりやすい広い場所での子育ても、たくさんの仲間の目があった方が安心できます。やはり草原で暮らしている俊足で有名なチータも群れをつくることがあります。
猫族だから単独で暮らす、というよりも生活環境と自分の生態合わせて単独生活か集団生活かを選んでいると言っていいでしょう。
猫だって家族が好き
全ての猫がひとりでいるのを好むとしたら、そもそもイエネコは存在しなかったでしょう。イエネコの元はヤマネコ(山猫)です。単独行動の野生の山猫が人と一緒に暮らすことを選んだのは、人一緒にいる方が暮らしやすいことを学んだからです。
1.人と猫のWin-Winの関係
農耕をはじめた人間は収穫物を貯えるようになりました。その貯えを狙ってネズミなどが貯蔵庫に出没しはじめます。猫は人のそばにいれば貯えてある穀物を狙ってやってくるネズミを捕まえることができることに気づきました。
人も猫がいれば貯えを守ってもらうことができると知ります。こうしたWin-Winの関係を築いてからかれこれ10000年以上たっています。
人と猫はお互いを家族だと認め合っているのです。猫族の中でもイエネコはひとりが好き、というわけではありません。
猫だって一緒に暮らす家族が大好きなんです。
猫を多頭飼いする楽しみと注意点
猫に限らず動物は複数で飼うと人間には見せない思わぬ仕草を披露してくれます。多頭飼いの飼い主は思わぬ仕草ににんまりしてしまうシーンに出会う機会が一頭飼いよりも増えます。
しかし、楽しみが倍になると同時に飼い主の責任もその分大きくなります。
1.多頭飼いのメリット
・猫たちの新しい一面を見ることができる
猫はクールな反面、とってもフレンドリーで遊び好きです。結構なお年になっても猫じゃらしでの遊びにつき合ってくれます。
手先だけで遊んでもあれだけ面白い動きを見せてくれる猫。これが自分と対等の動きをする相手となるとその行動は縦横無尽で予測がつきません。
また、複数の猫が寄り添って寝ている姿ほど見ていてホワホワする光景はありません。猫好きにはたまらないでしょう。SNSにアップする写真の枚数が数倍になること請け合いです。
・運動量がグッと増える
遊び相手が見つかるわけですから運動量もグッと増えます。遊び相手の身体能力が自分とほとんど変わらないのですから家中を立体的に使って遊び回ります。
・ストレス解消になる
新しい仲間がやってきた当初は大きなストレスを感じているはずです。しかし、慣れてしまえば飼い主よりも猫同士でくっつき合っていること方が多いものです。
運動で発散して、ご飯をたくさん食べ、体を触れあいながら安心して寝ることでストレス解消に繋がります。
2.多頭飼いのデメリット
・猫同士猫のストレス
猫は単独で生きる生きものとされていますが、長年、人と一緒に過ごしてきたイエネコは仲間が増えることを嫌がりません。
しかし、当初はどの子にとっても新しい仲間はストレスの原因になります。
また中には新しい猫を受け入れることができない子もいます。
・お金の問題
家族が増えればその分出費は増えます。2匹になれば餌代、トイレ代、医療費などは費用は倍かかると考えてください。3匹なら3倍です。
物を壊したり、壁や柱にイタズラする被害も増えます。
・病気や怪我、迷子の可能性が増える
顔見せの時に大げんかを始めてしまい、片方または両方の猫が深い傷を負ってしまうことがあります。複数になれば遊ぶ時間も増え、それだけ怪我をする機会も増えます。
新しい猫が潜在的に持っていた病気が先住猫で発症することも考えられます。
玄関や吐き出し窓の開け閉めの時、他方に気をとられて別の猫が表に飛び出して迷子になってしまう例も珍しくありません。
幸せな環境作りは飼い主の責任
多頭飼いのデメリットをご紹介しましたが、これらのデメリットは飼い主の努力でほとんど解決することができます。
1.猫同士のストレス対処法
どちらの猫もひとりでいることのできる場所をつくってやってください。
一匹一部屋が理想ですが、そうもいかない場合は、猫つづらのような隠れ家やキャットタワーなどで立体的な空間を用意してやりましょう。
猫たちは勝手にお気に入りの居場所を見つけます。
どうしても他の猫を受け入れない猫でも、自分の居場所が確保されていれば「新人はいないことにする」という対応でなんとかやってくれます。
ご飯をやるときや膝にのる順番は先住猫を優先します。
よほどのんきな猫でなければ、最初は必ず威嚇し合います。
先住猫が自分の立ち場を新人にわからせるために猫パンチを繰り出します。
そんな時はグッとこらえて様子を見ましょう。
飼い主がヘタに新人をかばうと、放っておけばうまくいくはずの関係がこじれてしまうことになります。
本気の喧嘩かどうかは見ればわかりますから、よほどのことがない限り手を出さないでください。
一番のポイントは「飼い主が猫の威嚇にビビらない」ことです。
2.お金の問題対処法
これは素直に倍または数倍の費用を出費するしかありません。
今までプレミアム・キャットフードやっていたのに、量が増えたらからといって出費を抑えるために安価なフードにレベルを落としたりすれば先住猫は体調を壊します。
トイレを無理矢理共有させようとしたり、予防注射をスキップするなど決してあってはなりません。
一度飼ってしまった以上、足りない分は稼ぐ覚悟が必要です。
3.病気や怪我、迷子への対処
猫同士の相性を考えるのであれば年齢は近い方がいいでしょう。純血種なら種類によって運動量が違ったりすることもあります。繁殖を考えても同じ種類の方が無難です。
年齢と種類合わせれば(仔猫の間は別として)別々の餌を用意しなくて済み、費用面でも助かります。
顔合わせの前に新人の診察、ワクチン接種、ウィルス検査などは済ませておきます。新人が来てからしばらくして先住猫の体調が思わしくない場合は、心理的なこと以外の原因も考えられますので医師に相談しましょう。
顔合わせの時、いきなり鼻面をくっつけるのは止めましょう。どちらの猫もドキドキしながら様子を探り合っています。
こういう場合は新人を離れた場所に置いて様子を見ます。心配ならケージなどで仕切っておくといいでしょう。
迷子への対処は「目配り」これにつきます。
その上で、脱出防止用のネットや柵などを活用してください。
まとめ
猫はクールでもありフレンドリーでもあります。そこが猫の面白さです。
一匹で飼っていても感じるその特徴が多頭飼いになると更に引き立ちます。
猫同士の掛け合いや仕草は一日中見ていても飽きません。多頭飼いで可愛い猫の新しい姿を見つけてみませんか。
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