猫に薬を飲ませるのはとっても厄介です。そもそも薬というのは、人間だって好き好んで飲みたいものではありません。
ある程度言葉の通じる子どもが相手でもなだめたりすかしたりしてやっとのことで飲ませた後にはご褒美をと大変です。
ましてや、犬や猫が相手となると推して知るべしです。今回はそんな猫に薬を飲ませる方法をご紹介します。
猫には3つの武器がある
薬をやる困難さを犬と猫とで比べれば、猫の方が遥かに大変です。
その大きな理由は3つです。
- 牙がある
- 体が柔らかい
- 爪がある
これです。
犬と猫の違い
犬だって簡単なわけでありません。でも、犬の武器は牙だけですので薬を飲ませるために上あごを確保してしまえば、文字通り手も足も(口も)でません。
おとなしく口を開けさせることに犬と飼い主の両方が慣れれば、口に手を出し入れするときのタイミングを間違えない限り失敗することはありません。
でおも猫は口を確保しても4本の足に爪があります。
そして、体操選手よりも柔軟な体でどんな体制からでも攻撃が可能なのです。
猫に薬を飲ませる手順は?
猫に薬を飲ませるために、まずやることは以下のに二点です。
- 薬の準備
- 猫の確保
1.薬の準備
薬を飲ませるために猫を捕まえてからバタバタと準備していたら不安を与えるだけです。
逃がしたらしばらくは捕まりません。
猫を確保したら即飲ませる態勢を整えておきます。
- 錠剤カプセルはパッケージから出す。
- 液体や水に溶かした粉薬はフリンジやスポイトに1回の投薬量を入れる。
- オブラートにくるむ、投薬器にセットする。
そして、コップに水とスプーン(金属の物は口内を傷つける恐れがあるので避けましょう)を用意しておきます。
2.猫を確保する
これが一番肝心です。リラックスさせろ、というのは無理でしょうが、とりあえず自分の猫が一番落ち着く方法を見つけてください。
猫を確保しておく方法は
- 抱きかかえる
- 股で挟む
- タオルでくるむ(バッグから顔だけ出させる)
- 補助を頼む
などがあります。
・抱きかかえる
猫を縦または横抱き、仰向け、後ろから抱っこなど、猫が一番落ち着く体勢をとらせてあげてください。
どの体勢をとるとしても、薬をやるときに両手は塞がってしまいますから二の腕で前脚を押さえ込めるようにします。
・股で挟む
嫌がらないのであれば両方の太腿の間で胴体をすっぽりと挟み込んでしまいます。
向きは正面でも後ろ向きでも構いません。
薬をやるときに顔を上向きにさせることを考えると後ろ向きの方がやりやすいかもしれません。飼い主と目を合わせていないと不安がるなら前向きで。
当たり前ですが、暴れたからといって思いっきり力を入れて挟んではいけません。内臓に負担をかけたり、骨折させてしまうこともあります。
・タオルでくるむ
バスタオルなど厚めのタオルでくるんでしまえるなら安心です。
ファスナーつきの鞄や紐で口を閉めるタイプのザックから顔だけ出させる手もあります(医者に連れて行かれるのを連想して嫌がる可能性が大ですが)。
病気がちな子は普段からタオルにくるまることに慣れさせておくといいかもしれません。
・補助を頼む
これが一番です。一人よりも二人、前脚担当、後ろ脚担当、薬係と三人いてもいいくらいです。ひっかき傷くらいは勘弁してくれる相手にお願いしましょう。
薬別の4つの飲ませ方
猫が落ち着いたら薬を飲ませます。
口を無理に開けさせる錠剤やカプセルはスピードと正確さが肝心です。
1.錠剤・カプセル
- 薬を親指と人差し指でつまみます
- 残りの手で、鼻面(ひげぶくろ=ウィスカーパッドの後ろ)をつかみ
- 親指と人差し指で頬の両側から猫の上あごをおさえて、上を向かせます
- 薬を持っている手の中指で猫の下あご・前歯の部分おさえて口を開けさせます
- 舌の奥の真ん中に薬を落とし込みます(あせって放り込んではダメ!)
- スプーン一杯の水を流し込んで、ノドをなぜて薬を飲み込ませます
2.液体薬
- シリング(注射器)の場合は、親指で押し子(ブランジャー/薬を押し出すためのスティック)の上をおさえ、残りの指で本体を握ります。普通に注射器を持つやり方よりも、この持ち方の方が薬の出方を調整しやすいのです。たとえが悪いかもしれませんが「戦闘機の操縦桿を握る」感じです。
- もう片方の手で猫の顔を確保
- 牙(犬歯)の後ろにシリンジを差し込んで
- ゆっくりと薬を注入します(いそぐと口からあふれ出てしまいます)
- 上を向かせたまま、ノドを優しくなぜて薬を飲み込ませます
飲み物に混ぜてやる場合は、一度に混ぜないで様子を見ながら与えて薬1回分を確実に飲ませるようにしましょう。
3.粉薬
粉薬のやり方はいくつかの方法があります。
・塗りつける
- 粉薬を少量の水で練っておきます
- 指の先につけて、猫の頬の裏に塗りつけます
- 水を飲ませます
・シリンジやスポイトを使う
- 粉薬を注入できるくらいまでゆるく水で溶きます
- あとは液体薬と同じやり方です
・ゴハンに混ぜる
ゴハンに混ぜて与えます。いっぺんに混ぜてしまうと残したときに薬の量が足りないことになりますから、いつもの半分より少ない量に混ぜて様子を見ながら与えます。
薬の量が多いとニオイで食べてくれないことがあります。加減しながら与えてください。
ゴハンに混ぜるやり方は液体薬でも使えますが、お皿の底に薬が残ってしまう場合がありますのでおすすめできません。
4.投薬補助アイテムを使う
薬を与える手助けをしてくれる補助アイテムがあれこれと出ています、活用しましょう。
・オブラート
人間が使うのと同じ形状です。人間用を使っても問題ないといわれていますが、ペット用が販売されているのでそちらを使いましょう。
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・ピルタブポケット
ハーフドライ(ハーフウェット)のオヤツに薬を埋め込む溝や穴があいています。そこに錠剤やカプセルを詰め込んで与えます。
・ペースト状の投薬補助アイテム
堅めのペースト状のオヤツに薬を包んで与えます。
・投薬器
小さいマジックハンドです。先に薬を挟んで口内に差し込み喉の奥に投与できます。
指を口の中に入れなくていいので噛まれる心配がありません。
ただし、器具本体に噛みつかれるとかみ切られた破片が口の中に落ち込んで、のみ込んでしまうことがあるので油断は禁物です。
勝手にやってはいけないこと
以下のことは必ず医師の許可を得てから行ってください。
- 錠剤を砕く
- カプセルの中身を出す
- 液体薬や粉薬を水以外飲み物に混ぜる
- くすりをゴハンやオヤツに混ぜて与える
錠剤やカプセルは効き目が出始める時間を考慮して作られています。
砕いたり開けたりすればその配慮が無駄になってしまいます。
薬を飲み物やゴハンに混ぜていいかどうかも必ず医師に確認してください。
投薬補助アイテムを使うときも医師に相談しましょう。
病院で適切な物を準備してくれるかもしれません。
褒めちぎる
薬をやった後はしっかり褒めてやります。
投薬の後にオヤツをやっていいなら(これも医師に確認してください)あげましょう。
猫は犬ほど薬を飲むことに慣れてくれませんが、褒められて嬉しくないわけはありません。
次回、少しでも楽をするために褒めちぎってやります。
逆に、薬を吐き出したり、噛みつかれたり、ひっかいたからといって叱ってはいけません。次から薬の袋を見ただけで逃げ出してしまうようになります。
まとめ
猫によっては拍子抜けするくらい簡単に飲んでくれる子もいますが、一般的にはいきなり一人で挑戦するにはハードルの高い戦いです。
まずは医師と一緒に薬をやってみましょう。
ただ、薬の飲ませ方を聞くとさっさっとやってしまう医師もいます。
そうすると次の機会は数時間後までやってこないことになってしまいます。
ですから、あなた自身でやらせてくれるようにお願いして、医師にはサポートについてもらうと良いでしょう。
猫に薬をやるのは大変です。
大変なことをやらなくてはいけないのは、それをやらないと大切な猫にもっと大変なことが待ち受けているからです。
「無理は禁物」といいたいところですが、こればかりは愛猫のためにも噛みつかれようがひっかかれようがやらなくてはいけません。
なんとかがんばってください。